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歯周病とデンタルプラーク

粘着する細菌の塊デンタルプラーク

歯周病は、歯面や歯肉縁下に付着・定着した細菌塊デンタルプラークの特異的および非特異的刺激により歯周組織に生じる慢性炎症性疾患である。

したがって、歯周病の病因論や予防・治療において、デンタルプラークはキーワードの一つとして主要な地位を占めている。

デンタルプラークは、17 世紀の van Leeuwenhoek によって手製の顕微鏡下で人類が初めて観察した細菌塊であるが、1990年代の後半になって細菌バイオフィルムとして認識されるようになった。

細菌バイオフィルムは、固相、液相、気相の界面に形成される微生物の集簇的増殖様式の一つで、広く自然界に分布している。

バイオフィルム中の細菌は、自己の産生した細胞外マトリックスで覆われた複雑で剥がれ難いコロニーを形成し、免疫系や化学療法剤に対して抵抗性を示すことにより、結果として感染の慢性化、難治化を招くと考えられている。

バイオフィルム中の細菌は、同一の菌であっても、Koch 以来の細菌学の主な対象であった浮遊系細菌とは少し異なった性状を示す。

この理由の一つとして、バイオフィルム細菌と浮遊系細菌との間で、発現している遺伝子のいくつかが異なっていることを示す研究報告が、最近、発表されるようになってきた。

例えば、口腔細菌の多くと同じく、Pseudomonas aeruginosa のような日和見感染の原因菌は持続性の感染を起こすことがあるが、バイオフィルムを形成している同菌と浮遊系の菌とを DNAmicroarray を用いて比較した結果、約 1% の遺伝子の発現が異なっており、そのうちの半数の遺伝子はその発現が誘導され、残りの半数は抑制されたという。

発現が変化した遺伝子のいくつかは浮遊系の薬剤感受性に影響する遺伝子であることが知られている。

初期のプラーク(バイオフィルム)は通性嫌気性菌が優勢であるが、徐々にバイオフィルム内の酸素分圧が低下してくると、偏性嫌気性菌が多数棲息するようになることはよく知られている。

同一の菌においても、好気条件から嫌気条件へと環境が変化していく中で、それぞれの環境に対応すべく遺伝子の発現プログラムを変更している可能性が考えられる。

化学療法剤などがあまり有効でないとされているバイオフィルム細菌に対して、バイオフィルム形成の Key になる遺伝子の発現を抑制できるような薬剤が開発されれば、現在臨床において主流であるバイオフィルムに対する機械的除去療法に加えて、新たな化学的コントロール法の出現につながるものと期待される。